用語解説 -主題/副題・抜き彫り/額彫り-

刺青を入れる際、題材になるものはとても沢山あります。
龍・虎・鳳凰・鯉などの図柄から、実在した豪傑の人物絵、人気のある逸話のワンシーン、不動明王・大日如来等の仏画まで、非常に多岐に渡ります。
この時に図柄には主題・副題といった分け方があり、更に背景を彫るか、彫らないかで抜き彫り・額彫りという違いがあります。
この記事では『主題』『副題』『抜き彫り』『額彫り』といった用語の解説をします。

※文中の画像は全て日盛の作品です。

主題と副題

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図柄には、主題と副題があります。主題とはその絵の主人公となる図柄、副題は主題をより際立たせて彩る、相性の良い図柄を指します

例えば『唐獅子』というオーダーであれば百獣の王に対して百花の王と呼ばれて相性の良い『牡丹』の花を散らして『唐獅子牡丹』という題材に昇華させることができます。
これは色合いの面からも図柄が映えるので、お勧めしたいところです。
この場合『唐獅子』が主題で『牡丹』が副題となりますが、広い意味で主題を『唐獅子牡丹』と捉える場合は、例えば共に表現している『波』や『岩』、『雷』などが副題となるでしょう。

お金よりも大切な有限のキャンバス、体を大切に使って下さい

唐獅子単体に比べて、牡丹や岩・波などの副題を増やすと非常に図柄に厚みが増し、迫力と彩りが増えますが、工程は格段に複雑になるために予算は高くなります。

一度体に入れると、一生付き合っていく図柄になるので、悩んだ場合は予算よりも是非気に入った図柄の方を取ってください。
もちろん主題単体の抜き彫りでも大満足して頂けるような仕事はしますが、これは商売上そろばんを叩いて話している訳ではなく、『体』は有限だということです。

一度刺青を彫ると増やしたくなります

予算の都合上刺青・タトゥーのサイズを控えめにしたり、図柄を抜き彫りでオーダー頂いた例では、彫り上がりに勿論ご満足は頂いた上で、これだけ良いものならやはりもう少し伸ばしたい、副題を追加したい、更に華やかになるなら額もやっぱり入れたいと仰って頂くこともあります。

「これを入れたらもう一切入れない!」と施術前に仰ってから始める方でも、です。
そういった方を含め、今までかなりの高確率で、何人も、何度も「やっぱり増やしたいなぁ…」と追加オーダーを頂いて参りました。
これは非常に彫師としてありがたく、名誉なことですが、複雑な気持ちにもなります。

なぜなら、当初のオーダーで針やインク・備品等の予算を組む都合上、残念ながら一番始めに仰って頂くより結局予算が高くなってしまうからです。
また、最も悔やまれるのは、額や副題については後から増やすことも当然可能ではありますが、始めからオーダー頂いた方が全てをトータルでデザインするので、額や副題を前面に配置したりすることで、立体感や奥行きが出て、より迫力のある図柄を作ることが出来ます。

刺青は、あの世まで持っていける唯一の財産なので、お客様ご自身が納得のいくまで豪勢な図柄を選択してほしい、というのが彫師としての願いです。

額彫りと抜き彫りの違い

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主題又は主題と副題のみで表現することを抜き彫りと言います。肌のコントラストを綺麗に見せることができるので、女性に人気の彫り方でもあります。

額彫りとは和彫り独特の表現方法で、その主題をより勢い付け、美しく奥行きを見せることができます。

基本的に黒の濃淡を用いて背景として表現し、主題がどこにいるのかを意味付けることも可能です。
例えば龍であれば、波などの表現のみなら冬場川底で暴れている表現、下部が波で上部に雲や雷を配置すると竜巻と共に天空に駆け上がる様を、全体が空の表現なら悠々と天上を舞う龍の表現となります。

額彫りは施術前と後、両方のタイミングで承ることができますが、初めに『額で彫ってくれ』とご依頼頂いた方が、主題副題も含めた額の表現が可能なので、施術前に決めて頂く方がおすすめです。
当スタジオは図柄のサイズを極力大きめに表現するので、抜き彫りでも断然迫力を出しますが、やはり額彫りにその迫力はかなわないでしょう。

当スタジオの額彫り

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額彫りは昔ながらの粋な表現なので、和彫り表現の代表格として任侠道に生きる方のイメージが強いのも事実です。
当スタジオでは、伝統和彫りの粋な表現・精神はしっかりと伝承した上で現代和彫りとしての非常にモダンな額彫りの表現をご提案します。

自然界の万物には規則正しく一定のものはありません。
当スタジオでは、各副題の渦や雲などの表現に不規則な変化を持たせたり、人体の各部位において最も美しく見えるように表現を変えながら、『主題が立体的に見える・図柄に奥行きを持たせる』ということ等を考えながら、お客様一人一人に合った額を作成・ご提案しております。

一般の方も、そうでない方にも是非当スタジオの額をご検討頂きたく思います。

最後に

同じ大きさで同じ題材の図柄でも、タトゥースタジオによって絵はもちろん予算もかなり変わってきます。

図柄の美しさが最も大きな選考基準になるかと思いますが、当スタジオでは機材の研究等を進めることによって、施術の速度も格段に速い方であると自負しています。
そのスピードを生かして、早期の施術完了はもちろん、極限まで図柄の表現を突き詰めることを目指しております。

それでも通常刺青の施術についての予算はどうしても高くなりがちです。
これは、医療施設と同程度、もしくはそれ以上の衛生管理を実現しようとした場合、その運用維持費がかなりかかる計算になるためです。
病院と違って、刺青には当然ながら健康保険が適用できないというのも大きいですね。

また当スタジオでは、原画を使いまわして刺青を施術することは、お客様からの強い要望(デザインの持ち込み)がない限り、基本的にありません。
オーダーが一般的な図柄の代表である龍だとしても、お客様の体つきや要望に併せて最も美しく見えるポーズや表情を構築していきます。
世界に一匹しかいない龍を作ります。

この製作期間に対する対価・参考資料費も予算に組み込まれています。

あまりに安価な予算を提案するスタジオでは針・インクなどの消耗品始め備品等諸経費を削減しているケースもあります。
不安に思うことがある場合は必ず施術前に適正な衛生管理をしているのか、ご自身で確認するようにしてください。


初代日盛一門

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